看護師のコミュニケーション能力を高める5つのコツ

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認定看護師
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村上志歩美

緩和ケア認定看護師の村上志歩美です。
看護師としては15年目になり、これまで13,000人を超える患者さんと関わってきました。
緩和ケアの世界でキャリアを積み、順風満帆に思えた看護師人生でしたが、流産を経験して初めて我が子を亡くす痛みを知りました。そして支えてくれた家族や友人の優しさがどんなに人の心を癒やすのかを知りました。
こんな私だからこそ大切な家族を失う人の気持ちがわかりますし、緩和ケアの素晴らしさが伝えられます!
私が持っている知識を余すことなく発信するため、本の執筆や看護学校での講師など精力的に活動中。
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Last Updated on 2022年12月1日 by 村上志歩美

緩和ケアや看護に関わらず、社会生活を送るにはコミュニケーションスキルが必要になりますよね。社会生活どころか、家族という小さなコミュニティの中でも必須ですね!

私も以前はコミュニケーションがとっても苦手でした。褒めたり褒められたり、謙遜したり喜んだりと自分を表現することができなくて、言葉を発するのにもどかしさを感じていました(←看護師として致命的)

ですが、引っ込み思案だった私が、コミュニケーションスキルを磨き、ついには緩和ケア認定看護師にまでなれました。苦手なことを克服するよりも得意なことを伸ばした方がいいという考え方もありますが、コミュニケーションに関しては、絶対苦手なままでいない方がいいと思います。

コミュニケーションスキルが高いとシンプルに生きやすいんですよね。

この記事を読むと、どんなにコミュニケーションに自信がない人でも、少し意識を変えて行動するだけで劇的にコミュニケーションスキルを上げることができるようになります。

私が苦手だったコミュニケーションスキルをどのように磨いたかご紹介します。まずは、意識改革から始まります。

コミュニケーションの決定権が受け手側にあることを知る

まずはなんと言ってもこれです。コミュニケーションの決定権は、伝える側ではなく、受け手側にあるんです。

コミュニケーションって、「言ったor言わない」の世界があって、自分はしっかり伝えたと思っていても、相手に伝わっていなかったり、誤解が生じていたりすることってありますよね。特に新人看護師の頃は、自分の報告次第で相手を不快にさせてしまったり、意図したことが伝わらずお叱りを受けたりするものでした。

自分が成長して、新人看護師の指導をする立場になったときだって同じことが起こります。自分が指導したことが、新人看護師に伝わらず、他の同僚から同じ指摘を繰り返し受けている場面を見ることは、臨床では非常に多いと思います。その度に「あの新人は話が通じない」とか「何度言われてもわかっていない」という評価を受けてしまうことになるんですよね。そして、何度言っても伝わらないなら伝える必要はないと諦めてしまう人も中にはいます。残念ながら、これが現実です。

ですが、この場合、コミュニケーションの決定権というのは、私たち先輩看護師ではなく新人看護師にあるということを忘れてはいけません。

繰り返しますが、いつだってコミュニケーションの決定権は、受け手側にあるんです。

患者さんとのコミュニケーションもしかり。医者も看護師も医学的知識がない患者さんに伝わるように説明をしなければなりませんよね。そんなとき、自分はちゃんと伝えたという自己満足が存在してはいけません。患者さんが説明を正しく解釈しているのか、情報を伝えたあとに伝わったかどうかの確認作業が待っているということを知っておくべきです。

その点を理解していないと、伝わらないのは受け手の責任で、伝える側が伝える努力をさぼってしまいます。悪循環に陥ってしまうんですよね。相手に「理解する能力がない」のではなく、自分に「誰にでも理解できる説明ができない」というスタンスでいることがとっても大事です。

アンガーマネジメントの基本「6秒」耐える

アンガーマネジメントってご存じですか?

はじめての方へ | 【公式】日本アンガーマネジメント協会
アンガーマネジメントについて、どんなものか、またどういった場所で活用されているかをご紹介します。

怒りの沸点が低く、怒りにまかせて攻撃的な発言をしていた私ですが、アンガーマネジメントを知ったときは、目からうろこ状態でした。相手に怒りをぶつけた時って、自分にも相手にも気持ちのいいことなんて一つもないんですよね。イライラと怒りにまかせて、きつい言い方や暴力的な言葉を選んだあと、冷静になると「なんであんなこと言ってしまったんだろう?」と自己嫌悪に陥ることがありますよね。

さらには、感情をぶつけられた相手だって、傷ついたり、新たな怒りが生まれたりすることだってありますから。今後の付き合いにも影響が出てしまいます。コミュニケーションにおいては、自分も相手もwin-winの関係でいたいものです。自分の伝えたいことをただ伝えるという一方的な押しつけではなく、相手にもプラスになってほしいですよね。注意したいことがあったとしても、それを感情に任せて伝えても、相手が不快だと感じたら、どんなに正しいことを言われたとしても素直に受け入れられなくなってしまいます。そうなってしまうと、自分も相手も嫌な気持ちになってまで、正しいことを指摘する意味がなくなります。だって、言われた相手だって腹を立てて、言うことを素直に聞いて行動を改めようとは思えませんから。自分の言葉や態度一つで、もしかしたら相手に伝わったり、心に響く可能性があります。

アンガーマネジメントというのは、ざっくり言うと「怒りは6秒でだいたい落ち着くから、その6秒を我慢すれば、ピークを過ぎて少し冷静になれるよ」ってことですね。この「6秒ルール」を徹底すれば、怒りで揉めることはほとんどなくなるはずです。ついカッとなって・・・ということがなくなるだけで、冷静に伝えたいことが伝えられる可能性は高くなりますよね。

新人指導においても、新人の態度にカチンときてしまうと、伝えたいことは他にあるのに人格否定から入ってしまう恐れがあります。「なんなの、あんたのその態度はっ!!」と怒るのではなく、6秒待って感情を落ち着けて、「さっきのあの対応は、もしかしたら相手を不快な気持ちにさせてしまうかもしれないから、次からはこうしてみませんか?」と冷静に悪い部分を抽出して指摘できますよね。どんなに腹が立ったとしても、コミュニケーションにおいて、相手の人格を否定したり傷つけたりする言葉や態度は御法度だと思っています。その点は肝に銘じておきたいですね。

患者さんとの関わりでも、注意していただきたいことです。理不尽なことを言われることだって、もちろんありますよね。私も当事者の看護師が不在の間に、代わりに患者さんから胸ぐらをつかまれて怒鳴られたことがあります。「それは私じゃない!!当事者に言ってくれ!!」と言い返したくもなりますよね。ですが、そこでこちらも怒ってしまえば、ただのカオス状態のクレームものです。

つまりは、怒っている相手と真っ向に向き合うことには、損しかないんです。どんなに理不尽であったとしても、決して応戦してはいけません。win-winの関係が成立しませんから。怒っている相手と対峙したら、「わぁ、この人すごく怒ってるな~」くらいに見ていた方がいいですし、余裕があるなら何に怒っているのかを考えられると、自分を客観視するトレーニングにもなります。

相手の理不尽な怒りには決して向き合わないこと!メリットがありません。自分のためにも、「相手は自分のどこにこんなに怒っているのか?」を冷静に分析した方が、自分の至らなかった行動を振り返るチャンスになるので、怒っているときこそ冷静に!です。

自分が思っているほど、相手は気にしていないと気づく

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どうしてもイライラしたりむしゃくしゃしたことをあとになって思い出してたとき、怒りと一緒に思い出してほしいのが「多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。」というフレーズ。自分があとにも引きずる嫌な気持ちを経験したとしても、嫌な気持ちにさせた当の本人は、案外気にせず自分の時間を楽しんでいたりします。そう、楽しんだもん勝ちみたいなとこありますよね。

怒りやモヤモヤした気持ちから抜け出せなくてつらいのは、結局自分だけなんです。相手は意外と気にしていないことが多い。それを知っておくと、とても気持ちが楽になります。私はそう思うようになってからコミュニケーションも気負いすぎなくなりました。気にしすぎないことがポイントです。

感情を引き出す技術を1つでもいいから身につける

私は緩和ケア認定看護師になって、がん患者さんと徹底的に向き合う機会が増えました。気持ちや身体がつらい患者さんから、認定看護師と話したいと指名が入るんですから、当たり前ですよね。ですが、話したいし、相談したいと面談予約が入るわりに、いざ向き合ってみると言葉で表現できない患者さんと出会うこともあります。

そりゃそうですよね。がんという深刻な病気を患って、自分でも自分の気持ちがまとまっていない患者さんが、何を話したらいいのかわからなくなることは当然あります。そんなときに私たち看護師は、患者さんが自分の気持ちに気づいて、それを表現できるように誘導しなければなりません。これは、認定看護師の仕事ではなく、看護師であれば誰でもできてほしいことです。

NURSEというコミュニケーションスキルをご存じの方は少ないのではないでしょうか?

医学書院 医学会新聞 看護師のためのコミュニケーションスキル研修―患者の感情表出を促す“NURSE”より

恥ずかしながら、私も5年ほど前に初めて知りました。

ただ話を聞くだけではいけないんですよね。

NURSEの頭文字の5つのスキルですが、突然全部できるようになりましょう!と言われても、コミュニケーションが苦手が方にとっては難しいことですよね。この5つのスキルの中で、まずは1つでもいいので、何か一つを試してみてほしいと思います。実践あるのみなので、まずは失敗を恐れずにトライする勇気をもってほしいです。

患者さんは今「つらい」という気持ちなのかな?と思えば、「今とてもつらいんですね」と返すだけでも意味があります。患者さんも話しながら、「あ、そうか、今私はつらいんだな」と自分の感情を発見して認めることができるようになります。

それができれば、「つらいですよね」とか「こんな状況だからつらいと思って当然ですよ」と一歩発展したコミュニケーションが取れるようになれます。そして「つらい気持ちをなんとか和らげたい」と患者さんをサポートしたいという思いを伝え、「一番つらいのは気持ちですか?それとも身体の症状で困っていることがありますか?」と尋ねると、患者さんの一番の困りごとを明確化して、そこに具体的にアプローチできるようになります。

私には難しいから・・・と諦めずに、まずどれか1つでいいから、何かしらのスキルを試してみることが、コミュニケーションスキル向上の第一歩になります。そしてそれは、そんなに難しいことではありません。きっとできるようになりますよ。実践あるのみです!

アサーティブコミュニケーションを使ってみる

先ほど、コミュニケーションにおいては、自分も相手もwin-winの関係でいたいと述べましたが、その考え方の根底にあるのが、アサーティブコミュニケーションというものです。コミュニケーションの決定権は相手側にあることはわかっていただけたと思います。ですが、どうしても言いづらいことを伝えなければならなかったり、相手に協力を得たりしなければならない場面ってありますよね。相手を不快にさせてしまうとわかっていても、どうしても伝えなければならないのですから、気が重くて当然です。そんなとき、アサーティブコミュニケーションがとっても役に立ちます。

自分の要望を通したいという気持ちだけでいると、相手にも譲れないものがある場合、どうしてもどちらも折れずに解決しない場合ってありますよね。

例えば、患者さんに午前中に入浴介助を希望されても、午前の検温と点滴や処置で、どう頑張っても午前中に対応出来ないという場面はありませんか?患者さんはどうしても、午前中に入浴したいと一点張りですが、看護師の人員不足により、午前中に入浴なんて無理です・・・ってこと、ありますよね??

そんなときに心がけるのがアサーティブコミュニケーションです。私もwin、患者さんもwinというぎりぎりの妥協点を見つけるのがコツです。患者さんが午前中の入浴にこだわるのが、午後から家族が面会に来るから綺麗にして洗濯物も持ち帰ってほしいという理由だった場合はどうでしょう。「ご家族とせっかく会えるのなら洗濯物も持ち帰ってほしいし、綺麗な状態で会いたいですよね。ですが、他の患者さんの治療や安全面を考慮するとどうしても午前中に入浴介助ができません。その代わり、昼食を早めにセッティングするので、食後しばらくして落ち着いてから、ご家族が面会に見えるまでの間に入浴を済ませるよう調整ができそうです。いかがでしょう?」と提案してみるのはいい手段だと思います。

相手に譲れない条件があるように、こちらにも譲れない条件があることは多々ありますから。自分と相手の都合に折り合いをつけて、両者ともに納得できるところまですり寄せることならできます。

このスキルを使うと、患者さんに嫌な気持ちをさせずに、こちらの要望も受け入れてもらえる場合があります。ただし、相手の意見をないがしろにせず受容しながら、こちらの大切に考えていることも伝えなければなりません。はじめは苦戦すると思いますが、慣れると妥協点でのwin-winの関係は作れるんだなと実感できるようになりますよ。

まとめ

いかがでしたか?

コミュニケーションが苦手な方でも、正しい知識と実践してみる勇気があれば、いくらだって成長できそうですよね。たった少しだけ勇気を出してみるだけで、コミュニケーションスキルは徐々に伸びますし、そこで獲得できる信頼感は自分にとって宝になります。

何度も繰り返しますが、忘れてはいけないのは、コミュニケーションの決定権は受け手にあるということです。そこだけは忘れずに、伝える努力を惜しまないことが、コミュニケーションスキル向上の大きな第一歩になります。

是非参考にしていただけると幸いです。

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